AIのハルシネーションが引き起こす危険とは? 事例と対策を徹底解説!

誤情報に要注意!
AIのハルシネーションを防ぐ3つの方法

「これ、本当に正しい情報なの?」

AIを使っていて、そんな疑問を持ったことはありませんか? 私は日常的にChatGPTを活用していますが、その中で明らかに間違った情報を見かけることが少なくありません。例えば、実在しない人物やデータを事実のように提示されたり、ありそうでなかった出来事がまるで歴史の一部のように語られたりすることがあります。こうした現象は、「AIのハルシネーション(幻覚)」と呼ばれ、生成AIの活用が進むほど無視できない課題となっています。

私自身、AIを活用したブログ作成ツールの開発に関わる中で、この問題をどう防ぐかに苦労しました。AIは高度な技術を持つ一方で、完全に事実のみを生成するわけではなく、場合によっては誤情報を作り出してしまうことがあります。どれだけ慎重に設計しても、ハルシネーションをゼロにするのは容易ではありませんが、適切な工夫をすればリスクを減らすことは可能です。

この記事では、AIのハルシネーションが発生する原因とそのリスクを掘り下げ、どのように対策すべきかを詳しく解説します。

この記事は、次のような方におすすめです。

  • AIの仕組みを学んでいるが、ハルシネーションについて詳しく知りたい方
  • AIを活用してコンテンツを作成しているが、誤情報に不安を感じている方
  • AIを正しく使いこなすための対策を知りたい方

AIのハルシネーションとは?

生成AIの利用が広がる中で、「ハルシネーション」という言葉を耳にする機会が増えました。この現象は、AIが実際には存在しない情報を生成し、あたかも事実であるかのように提示してしまうことを指します。AIが出力した情報を信じた結果、誤解や誤情報の拡散につながるケースも報告されており、AIを利用する上で注意が必要な課題となっています。

AIの「ハルシネーション」とは?

「ハルシネーション(Hallucination)」とは本来、人間が現実には存在しないものを知覚してしまう現象を指します。AIにおいても同様の概念で、学習データにない事実を「ありそうな情報」として生成し、誤った情報を提示することを意味します。

この問題は特に大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)において顕著です。AIは膨大なデータを学習し、パターンを基に文章を生成しますが、それは「確からしさ」に基づいたものであり、必ずしも事実とは限りません。そのため、専門的な知識を求める場面でAIを利用すると、意図せずして架空のデータや誤情報を得てしまうリスクがあるのです。

どのようにして誤情報が生まれるのか?

AIがハルシネーションを起こす背景には、いくつかの要因があります。

  • 学習データにない情報を補完しようとする
    AIは与えられたデータからパターンを学習し、それに基づいて文章を生成します。しかし、完全に未知の情報について尋ねられると、学習した知識の範囲内で「もっともらしい答え」を作り出そうとするため、誤った情報を出力することがあります。
  • 事実確認の機能を持たない
    現在の生成AIは、データを組み合わせて新しい文章を作成することには長けていますが、その情報が正しいかどうかをチェックする仕組みは備えていません。そのため、過去のデータや類似の事例をもとにしながらも、実際には存在しない情報を出力することがあるのです。
  • 曖昧な質問や長文の生成要求による影響
    AIは、明確な指示があるほど正確な回答を出しやすくなります。しかし、曖昧な質問をされた場合や、長い文章の生成を求められた場合には、「それっぽい」情報を埋め込む傾向が強くなります。この結果、AIが根拠のない事柄を自信をもって述べることにつながるのです。

AIのハルシネーションが発生する原因

AIがハルシネーションを起こすのには、いくつかの明確な要因があります。これらは主にAIの学習データやモデルの仕組みに起因し、AIの精度や信頼性に大きな影響を与えます。

学習データの質と量の問題

生成AIは、大量のデータを学習することで知識を獲得します。しかし、そのデータの質やバランスが不適切だと、誤情報を生み出しやすくなります。

  • インターネット上の誤情報を学習する可能性
    AIの学習データには、インターネット上に存在する情報が含まれています。その中には誤情報や偏った意見が含まれていることも多く、これらをそのまま学習すると、誤った事実を「知識」として持つことになります。
  • データの偏りによるバイアス
    学習データの出典や選定基準に偏りがあると、特定の価値観や情報のみを強調する傾向が強まります。その結果、事実とは異なる内容があたかも一般的な知識であるかのように生成されることがあります。

AIモデルの設計と仕組み

生成AIは、学習データをもとに新しい文章を作り出しますが、その根本的な仕組みが誤情報を生む原因にもなっています。

  • トークンの確率予測による文章生成
    AIは「次に来る単語の確率」を予測して文章を生成します。これは、過去の学習データに基づく確率計算の結果であり、必ずしも事実に基づいているわけではありません。そのため、あたかも本物のような誤情報が自然に生成されることがあります。
  • 事実に基づくチェック機能がない
    現在の生成AIには、出力した情報が事実であるかどうかを確認する機能が備わっていません。そのため、過去のデータに存在しない情報について尋ねられると、「それらしい」答えを作るだけになってしまいます。

プロンプトの影響

AIの回答は、入力するプロンプト(指示)の内容によっても大きく変わります。特に、曖昧な質問や長文の生成要求がある場合、ハルシネーションのリスクが高まります。

  • 曖昧な指示による影響
    具体的な情報を求めずに「〇〇について詳しく教えて」といった漠然とした指示を出すと、AIは学習データの範囲内で「もっともらしい」回答を作ろうとします。その結果、根拠のない情報が出力されることがあります。
  • 長文生成の要求による影響
    AIは、与えられた情報をもとに文章を展開しますが、長文を求められると、内容を膨らませるために実際には存在しない情報を加えることがあります。これにより、部分的には正しいが全体として誤った情報が含まれる可能性が高まります。

リアルタイムデータへのアクセスがない

多くのAIは、特定の時点までのデータをもとに学習しており、リアルタイムで新しい情報を取得することはできません。そのため、最新の出来事やデータに関する質問に対して、過去の情報をもとに「もっともらしい」回答を生成してしまうことがあります。

ハルシネーションを引き起こす要因を理解することで、どのような場面で誤情報が発生しやすいのかが見えてきます。

最新のAIハルシネーション事例

企業や個人がAIを活用する機会が増える中、AIが誤った情報を生成し、それが現実世界で影響を及ぼすケースも少なくありません。特に、AIが提供する情報が信用されやすい分野では、その影響は深刻です。

ここでは、AIのハルシネーションが実際に問題を引き起こした4つの具体的な事例を紹介します。これらのケースは、AIが誤情報を生成するリスクがどのように現実社会に影響を与えるかを示しており、AIを活用する際に慎重な検証が必要であることを改めて浮き彫りにしています。

Google Bardの誤情報提供(2023年2月・アメリカ)

2023年2月6日、Googleは新しいAIチャットボット「Bard」を発表しました。しかし、デモンストレーション中に「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の新発見について、9歳の子どもに教えてあげられることは?」という質問に対し、Bardは「太陽系外惑星の写真を初めて撮影した」と誤った回答をしました。

実際には、初の系外惑星の写真は2004年にヨーロッパ南天天文台が撮影したものであり、Bardの回答は事実と異なっていました。この誤情報が明るみに出たことで、Googleの信頼性が疑問視され、親会社であるAlphabetの株価は一時的に約1000億ドル(約13兆円)下落しました【注1】。

この事例は、AIがいかに「それらしいが誤った情報」を生成し得るかを示しており、AIの回答を無条件に信頼することの危険性を浮き彫りにしました。

ChatGPTの法律業界での誤使用(2023年5月・アメリカ)

2023年5月、アメリカの弁護士スティーブン・シュワルツ氏は、クライアントの訴訟準備のためにChatGPTを使用しました。彼はAIに過去の判例を調査させ、それに基づいた資料を作成しました。しかし、提出された書類に記載されていた6件の裁判例はすべて架空のものでした。

裁判所はこの問題を指摘し、シュワルツ氏と彼の法律事務所に5000ドル(約70万円)の罰金を科しました【注2】。この事件は、専門的な分野でAIを利用する際に、生成された情報の正確性を慎重に確認する必要があることを示しています。

ChatGPTによる架空の訴訟情報生成(2023年・アメリカ)

2023年、アメリカのラジオ番組司会者であるマーク・ウォルターズ氏が、ChatGPTに対して自身に関する訴訟情報を尋ねました。すると、AIは「ウォルターズ氏がセカンド・アメンドメント財団から資金をだまし取り、不法に自分のものにした」との架空の情報を生成しました。

この虚偽の情報に基づいた告訴状まで作成され、ウォルターズ氏は名誉毀損としてOpenAIを訴えました【注3】。このケースは、AIが存在しない情報を事実のように提示し、それが実社会で法的トラブルに発展する可能性を示したものです。

エア・カナダのチャットボットによる誤情報提供(2024年2月・カナダ)

2024年2月、カナダの大手航空会社エア・カナダは、AIを活用したチャットボットを運用していました。ある乗客が忌引割引の適用について問い合わせたところ、チャットボットは実際には存在しない割引制度を案内しました。

この誤情報を信じた乗客は、後日、割引が適用されないことを知り、エア・カナダに問い合わせましたが、同社は責任を負わないと回答。乗客はこの対応に納得せず、訴訟を起こしました。裁判所は乗客の主張を認め、エア・カナダに対して損害賠償金と裁判費用の支払いを命じました【注4】。

このケースは、AIが企業の公式なカスタマーサポートの一環として利用される場合、その誤情報が法的責任につながる可能性があることを示しています。企業がAIを導入する際には、ユーザーに正確な情報を提供できる仕組みを整えることが重要です。


これらの事例は、AIのハルシネーションが実社会に及ぼす影響の大きさを示しています。特に、専門性の高い分野や企業のサービスとしてAIを活用する場合、生成された情報の信頼性を慎重に確認し、人間の監視を適切に行うことが求められます。

AIのハルシネーションを防ぐ対策

AIのハルシネーションは、完全に防ぐことは難しいものの、適切な方法を取り入れることで誤情報のリスクを大幅に減らすことができます。特に、多くの人が日常的に利用するChatGPTなどの生成AIでは、出力された情報をどのように扱うかが重要になります。ここでは、一般のユーザーでもすぐに実践できる対策から、より専門的な取り組みまでを順番に紹介します。

生成AIを利用する際にできる基本的な対策

生成AIを利用する際に、個人でも簡単にできるハルシネーション対策をまずは押さえておきましょう。

  • AIの出力をそのまま信じない
    AIが生成する文章は、あくまで「もっともらしい」言葉の並びに過ぎず、事実に基づいているとは限りません。特に、法律や医療、金融などの専門的な分野では、必ず別の信頼できる情報源と照らし合わせましょう。
  • 複数の情報源を確認する
    AIの回答が正しいかどうかを確かめるために、インターネットや書籍など、他の情報源で同じ内容を調べてみることが重要です。特に、公式の政府機関や研究機関、ニュースメディアなどの信頼できる情報を参照することで、誤情報を見抜く手助けになります。
  • 具体的な質問をする
    AIの回答は、質問の仕方によって大きく変わります。曖昧な質問をすると、AIは「それらしいが誤った」情報を出す可能性が高くなります。例えば、
    NG例: 「最新の健康法を教えて」
    OK例: 「2024年に発表された科学的根拠のある健康法を教えて。その際、出典も明記して」
    できるだけ詳細な条件を指定することで、より正確な情報を得ることができます。

企業や組織での活用における対策

個人利用よりも、企業や組織がAIを活用する場合には、より慎重な運用が求められます。特に、ビジネスの意思決定や顧客対応に生成AIを導入する際は、以下のような対策が重要です。

  • ファクトチェック機能を導入する
    AIが生成した情報をそのまま公開するのではなく、人間が最終確認を行う仕組みを整えることが重要です。例えば、AIが生成した文章を別のツールで分析したり、専門家がレビューするプロセスを設けたりすることで、誤情報の拡散を防げます。
  • RAG(検索拡張生成)の活用
    AI単独で情報を生成するのではなく、リアルタイムで信頼できる情報を検索しながら回答を生成する技術「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」を活用することで、誤情報のリスクを減らせます。この技術を用いることで、AIが古いデータのみに基づいて誤った結論を出すことを防ぐことができます。
  • AI利用のガイドラインを策定する
    企業内でAIを活用する際は、ハルシネーションが発生した場合の対応策や、どの範囲でAIを利用するかを明確にするガイドラインを設けることが大切です。特に、AIが出力した情報をどのように検証するか、誤情報が発生した際の修正フローを決めておくことで、リスクを管理できます。

ハルシネーションは生成AIを利用する上で避けられない課題ですが、適切な方法を取り入れることでリスクを抑えることは十分可能です。まずは、AIの出力をそのまま鵜呑みにせず、情報の正確性を確認する習慣をつけることが、最も手軽で効果的な対策となります。

まとめ

AIのハルシネーションは、生成AIを活用する上で避けて通れない課題ですが、適切な知識と対策を持つことで、リスクを大幅に抑えることができます。特に、日常的にChatGPTなどの生成AIを利用する場合、AIの出力をそのまま信じず、情報の正確性を見極める習慣をつけることが重要です。

本記事では、AIのハルシネーションの原因やリスク、実際に発生した事例を紹介しました。そして、誤情報を防ぐために個人・企業ができる対策を具体的に提案しました。

以下の3つのステップを実践することで、生成AIをより安全に活用できるようになります。

AIの誤情報を回避する3ステップ

  1. AIの出力をそのまま信じず、必ず情報を検証する
    AIは事実確認を行わず、確率的にもっともらしい情報を生成するため、回答の正確性を必ず自分でチェックしましょう。特に、医療・法律・金融など専門性の高い分野では、信頼できる公式サイトや専門家の意見と照らし合わせることが不可欠です。
  2. 質問の仕方を工夫し、具体的なプロンプトを活用する
    曖昧な質問をすると、AIは不確かな情報を生成しやすくなります。質問には「出典を示して答えてください」「2024年時点の情報をもとに回答してください」といった条件を加えることで、より正確な回答を得られる可能性が高まります。
  3. AIの活用ガイドラインを理解し、適切な使い方を心がける
    企業や組織でAIを活用する際には、AIのハルシネーションを防ぐためのルールを策定しましょう。ファクトチェックの徹底、リアルタイムデータを活用するRAG技術の導入、AIの出力を人間が監視するプロセスの確立などが有効です。

AIは強力なツールですが、適切に使わなければリスクも伴います。日々進化する技術を活用しながら、誤情報に惑わされないリテラシーを高めていくことが、AI時代を生きる上で欠かせないスキルとなるでしょう。

出典リスト

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